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通貨燃ゆ―円・元・ドル・ユーロの同時代史



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現実の通貨

 序章のタイトルが「権力があって,初めて通貨がある」であるように,国際通貨は純経済学的なものではなく,きわめて政治的なものであることを,豊富な事例をもって解き明かしてくれる本です。
 基本的には通貨史の体裁をとった本で,登場人物の実像に迫りながらニクソンショックやブレトン・ウッズ体制の歴史的現場を語ってくれます。ただし,単なる過去の歴史本にとどまらず,ユーロ,人民元,円,ドルの現在の姿や未来にも言及してくれます。さらには,グルジア通貨から現在のアメリカのユーラシア戦略を解説したりと,通貨を通して現代の国際政治まで語ってくれます。
 一つ一つの事象や知識にいちいち感心してしまう楽しい本でした。ただ,ウェブサイトに連載してきた原稿をまとめたものだからでしょうか,一冊の本としてはややまとまりにかける感じがします。第一章から第七章までありますが,各章ごとの短編小説とでもいった感じを受けてしまいました。各章の内容が非常にすばらしいものなので,もう少し構成等をしっかりしてくれたらと残念な気持ちです。
読んで楽しく、理論と現実を理解する

 国際金融の現象を、経済理論で、平易に解説している。例えば、クリントン政権の前期では、円高容認により日本の輸出型企業の外国(米国とは明確に書いていないが、理屈的には米国)生産を促し、産業構造・貿易構造を転換させることで、米国の対日経常赤字を減らそうとしたが、その理論的背景には「マサチューセッツアベニュー・モデル」があったと説く。

 あるいは、「バラッサ・サミュエルソン理論」(内容は本書ご参照)により、通常は貿易財産業だけでなく非貿易財産業の賃金も値上がりし、固定為替相場制をとる国ではインフレとなり貿易財産業の競争力が失われていくが、中国の場合そうならないのは、労働者の地方から都市への定住移動を阻む戸籍・監視制度があることを指摘する。

 また、正史には登場しない歴史の面白さも披露してくれる。例えば、1945年ヤルタ会談直後の米ローズベルト大統領とサウジアラビア・イブン国王の極秘会談により、米国がアラブを守る代わりに、石油販売代金はドルのみで受け取るという約束が交わされ、「石油・ドル本位制」が確立されたという。

 さらには、素人が見落としがちな事実も、明かす。例えば、外国が持つ米国の国債額。近年、中国の取得額が急上昇して多額に上るという報道がなされているが、実は、絶対額で見ると、日本は中国の3倍以上を所有(全体の約4割)していると指摘する。同時に、日本はどんなに為替リスクがあろうとも(ドル安による米国債の差損)、その売り浴びせはできないと決めてかかっている米国の識者の論調を紹介する。

 全章を通して、「ヘぇー」「なるほど」の連続である。
 しかし、「懸命に働いて稼いでも、対外的にはドルでしか貯蓄できず、いずれドル安となって、その債権が目減りするのを受け入れるしかないのか」という誰しもが抱く疑問に対する回答は得られない。どうなのでしょうか?
人民元は経済のみならず、政治の問題である。

著者谷口智彦氏は日経BP社の主任編集委員であり、
現在、米ブルッキングズ研究所に滞在しておられる。
本書は氏が日経BP社のホームページで連載された
「円・元・ドル・ユーロの同時代史」を一冊にまとめたものである。

ここ10年近くアジア通貨に関わっている私だが、
常々通貨は、特にエマージン通貨は経済だけではなく
政治の問題なのだと説いてきた。それは
アジア通貨危機時の混乱を思い起こせば自明のことだろう。

特に最近ニュースを聞かない日は無い人民元の問題は
まさしく物価上昇率や外貨準備増大のみで語れる問題ではなく
著者の説く「中共のモンダイ」なのである。しかし、
それに正面から取り組んだ書は意外と少ない。

国際政治経済学者スーザン・ストレンジに倣うこの著者は
まさに権力と経済の視点の往復運動によって通貨を捉えようとしており
経済統計と数式さえ並べれば事足りるとする凡百の「経済」書とは
一線を画す珠玉の書であろう。

特に人民元切り上げを安易にニクソンショックに対比させようとする
安直な論者は、本書のブレトン・ウッズ体制への的確な言及を前に
たじろぐほか無いものと思われる。
わたしには読みやすかったです

国際政治経済学者のスーザン・ストレンジを学生の頃から読んでいます。
この著者はストレンジの生前、最期にインタビューした人と知って、思わず買ってしまいました。
土、日で意外に早く、一気に読めました。読みながら「こういう切り口の本が読みたかったんだな」と思いました。
ここに思わず書き込んでしまったのは、上に書いている方の印象とは逆に、わたしにはとても引き込まれる文章で、抵抗なく読め、随分人によって受け取り方に差があるんだなと思ったからです。
五つ星は手放し過ぎるので、1点引いて私は4つ星にしておきます。
なるほど、と思いました

通商交渉などでなぜアメリカが他国に対してあれほど居丈高になるのか、人民元はなぜ変動しないのか……といった疑問を、お金=権力という視点から、経済だけでなく政治的な力学を元に読み解く本。事例が豊富で、なるほど!と思いました。
が、面白いだけに、文章が下手なのが残念です。話が行ったり来たりして流れが非常に悪く、読みづらいです。盛り上がったところで「その詳細は節をあらためるほかない」などと勝手に断言し、話の腰を折ることしばしば。「詳細」に行き着くまでに内容を忘れてしまうような書き方です。雑誌の編集委員だそうですが、読みやすい文章を書くことを敢えて拒否しているのでしょうか……。思わせぶりだとか、硬い文章だとかいう以前の問題で、まず筆者の頭の中で話を整理してから書いてほしいと感じてしまいました。文章で星二つマイナスです。



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